「世界最大の国なき民」といわれるクルド民族の地「クルディスタン」は、第一次大戦後、強引に引かれた国境線によってトルコ、イラン、イラク、シリアなどの国々に分割統治されていますが、彼らはそれぞれの国において同化政策や数多の差別、迫害に遭い続けています。トルコ国内においても民族固有の言語、文化活動の一切が全面的に禁止され、また、ゲリラ活動の温床になるという理由での村の焼き払い、破壊、拷問、虐殺など、人道上決して許すことのできないトルコ政府による蛮行が繰り返され、トルコ政府はその事実をひた隠しにしてきました。

     著者の松浦範子さんは写真家として、「逆境のなかを明るく、たくましく生きる人々の姿」に魅せられ、7年近くにわたってクルディスタンの家々を訪ね歩き、彼らの肉声に触れてきました。

     最近では学者やジャーナリストによるクルド問題関係の著作も徐々に出版されるようになり、日本でも「クルド学」が漸く端緒についた感があります。また、アメリカによるイラク空爆が云々されるなか、良くも悪くも「クルド」が各種報道でクローズアップされるようになってきています。そのようななかで、クルディスタンに住む人々の家々を訪ね歩き、彼らの生活と文化、そして一人一人の生のさまざまな困難な状況に肉薄した本書は、日本でははじめての「素顔のクルディスタン」を紹介した本であると自負しており、多くの方に読んでいただける内容であると確信しています。

     ぜひ書店店頭で手に取っていただき、お買いあげいただきますようお願い申し上げます。

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        担当=安喜(やすき)まで

* NR出版会のホームページのコラム欄にて、刊行に寄せての著者の覚え書き「ク ルド人のまちを訪ねて」が掲載されています。著者のまなざしが非常によく伝わる文章ですので、ぜひご覧ください。