■■■ 書評より(抄) ■■■

●「北海道新聞」03年8月24日(「西日本新聞」03年10月12日)
竹かごの網目を牛のふんや樹液でふさいで作った、おわん形の舟で、大海原にこぎだすベトナムの漁師たち。この舟に魅せられた著者が足かけ六年、かの地の漁村を訪ねて書いたルポルタージュだ。……水揚げ直後の活気づく浜で、にっこりとほほ笑む少女。漁のすべてが人の手で営まれ、人々が海をおそれながらもいとおしむ様子に、暮らしの原点を感じさせられる。

●「週刊金曜日」03年8月29日号
魚醤と伝統的な竹籠舟を見たいとの思いから、ベトナム南部の漁村に通い始める。昔ながらの漁で暮らす人々の表情は活気に満ちていて明るい。写真集は、私たちが忘れかけている生活の原点を映し出しているようだ。

●「フィガロ」03年9月20日号(サラーム海上氏評)
あてもなくベトナムの漁村を訪ね歩いた末に偶然竹籠船の一群を見つけ、それから数年かけてその漁村に通い詰めシャッターを押し続ける。……訪問当初は一日一回しか網を引かなかった100%スローライフな村が6年のうちに市に昇格し、いまではリゾート開発も始まりつつある。そんな地域の微妙な変化に過多なメランコリーもノスタルジーも持つことなく、著者はコントラストの美しい熱帯の人々の生活を写し取る。十年後この村はどうなっているだろう。乞う続編。

●「日本カメラ」03年10月号
温かく力強い写真はもちろん、緻密な取材に基づいた文章からは、生きる勇気が湧いてくる。

●「旅」03年10月号
大型漁船での乱獲やリゾート開発など近代化の中で、今なお伝統漁法が受け継がれているわけです。/この舟は直径2m弱、深さ約1mのお椀型で、いわば竹製ざる。これに牛糞や樹液を塗って浮かせます。〈浜辺での人海戦術の水揚げ。もう日本では見ることがかなわない姿が、人々の日常のなかにあった〉そうです。


●「フォトコンテスト」03年10月号

ベトナム=ジャングルの民というイメージが、いかにいい加減なオリエンタリズムに満ちたものかがわかる一冊。魚醤(ニクマム)の基地で有名な地で、小さな「一寸法師の舟」で漁をする人々の逞しさに見とれてしまう。

●「旅行人」03年9・10合併号
ファンティエットからムイネにかけての海岸線はヌクマム(魚醤)の産地としても知られる。「一寸法師の船」のような竹カゴのザル舟で行う昔ながらの漁や、その漁法を親から習う子供の様子など、素朴な漁民の姿を美しいカラー写真とエッセイで生き生きと綴った一冊。

* 以上のほか、「出版ニュース」03年10月下旬号などにも紹介記事が掲載されました。

郷司正巳 写真・文
『ベトナム海の民』
新泉社 2003年7月刊
定価2000円+税
ISBN4-7877-0302-1
A5判 144頁

NR出版会サイト

トップ新刊重版情報既刊書籍リスト加盟社リンクNR-memo書評再録

Copyright(c) 2003. NR出版会. All rights reserved.