日本のなかの世界

原尻英樹

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新幹社 \1500-

ISBN88400-035-8


《書評抜粋》

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著者は、これまで外国人定住の実態や日本人との関わりを客観的に分析した研究はあまりなく、マスコミや研究者がつくりあげたイメージが一般化していると問題提起する。外国人犯罪報道も、真相がどこまで追求されているのだろうか。
「ガイコクジンについて考えるためには、日本社会を再考しなければならない。なぜなら、ガイコクジン問題は外国人それ自体の問題ではなく、日本社会のあり様が在日外国人に投影しているからだ」と、著者は言葉を結ぶ。


藤崎康夫「日本社会の実相映す在日外国人への処遇」(『公明新聞』2004.1.12.)

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 日本は文化や言語を異にする琉球国、台湾、朝鮮を併合し、人々は日本国籍に変えられた。だが、戦後、当事者の意向が考慮されることなく日米側の戦後政策により琉球国出身者は日本国籍のまま、台湾・朝鮮は外国籍に変えられた。日本に初めて大量の外国人が居住する結果となった。
 だが、日本では、「外国人」とは、外国から来た人であり、日本で生涯生活する人々という意味では理解されていなかった。日本の永住資格は、法的には「永住しても構わない」という意味で、永住権利を保証する「「永住権」ではない。この考え方は出入国管理のあり方の根本に関わっている、と著者は指摘する。

「在日外国人問題扱う好著」(『ニッケイ新聞(サンパウロ市)』2003.11.26.)

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 「日本は単一民族国家」などという妄言を発する政治家の意識の根底には、「日本民族以外この国にいてほしくない」という気持ちがかいま見える。しかし、現実には、多くのエスニック集団がこの国に根を下ろして生活を送っている。ところが、彼らの暮らしや歴史を描いた本は少ない。われわれは、外国に興味を持つようには、彼らに関心を示してはいない。そうした中で本書は文化人類学者によって書かれた。フィールドワークを重ねた記述には説得力がある。たとえば、「言葉や文化の違いは、公平な態度や誠実さの前ではあまり大きな意味を持たない」。この本を読むと、日本人の国際性なるものが渡航の頻度などで測れるものでは決してなく、日常の隣人たちとのつき合い方一つひとつに表れてくるものであることがよくわかる。

『週刊東洋経済』2003.12.6.

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多文化共生の必要性が言われる中、私たちは在日外国人の本当の姿を知っているだろうか。著者は大阪市生野区のコリアン街、ブラジル人労働者が多い群馬県大泉町、横浜中華街、さらに沖縄出身者が住む大阪市大正区を訪れ、街の歴史と人々の思いをとらえ返す。

『信濃毎日新聞』2003.11.23.

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 日本における異文化コミュニケーションとは何か。例えば、戦前の関西の紡績工場には、朝鮮や沖縄の女性たちが働きに来ていて、田舎から来た女工たちは異文化に出会ったという。
 著者は、お年寄りたちへの聞き取りを通して、異文化が日本社会にどのように根付いたのかを検証し続けてきた。本書では、済州島海女たちの日本での足跡を追いながら、大阪生野区のコリアンタウンを取り上げ、さらに横浜中華街、沖縄出身者が集中する大阪大正区、在日ブラジル人が集中する群馬県大泉町といった異文化エリアとそこに関わる人々を生き生きと描き出す。〈我々の日常生活の延長にみえる世界〉から、多民族・多文化社会と共存する日本社会のあり様が見えてくる。


『出版ニュース』2004.1/上・中


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