2009.05.01.up 


同時代社3月の新刊




                     
   
権力を取らずに世界を変える
  
ジョン・ホロウェイ/著 大窪一志・四茂野修/訳
  
560頁 定価3000円+税 ISBN978-4-88683-642-7



「本書は、世界中で行動を起こしている新しい世代にインスピレーションをあたえてきました。そして、社会変革の可能性について実りある議論を、いまも生み出しつづけています」マイケル・ハート(『〈帝国〉』共著者)


『権力を取らずに世界を変える(Change the World Without Taking Power)』は2002年に初版が発行され、その後、世界各地で巻き起こった議論・反響をふまえた増補改訂版が2005年、いずれもロンドンのPluto Pressから出版されました。日本語版出版にあたり著者のジョン・ホロウェイ氏(社会学・哲学・政治学者。1947年、アイルランドのダブリン生まれ。メキシコのサパティスタ運動、アルゼンチンのピケテーロス運動などの民衆運動に実践的・理論的にかかわる)より日本の読者のための序文をよせてもらいました。本書にも収録しましたが、ここにその一部を紹介します。著者の思いと同じく、日本においても活発な議論が巻き起こることを期待して。


日本の読者のみなさんへ

ジョン・ホロウェイ

 資本主義が人類にとって破局をもたらすものであることが、ますます明らかになってきました。しかも、それが明らかになればなるほど、資本主義をなくすにはどうしたらいいのか私たちにはわからないということも、ますますはっきりしてきているのです。どのようにして資本主義を倒す革命を起こせばいいのか、私たちにはわかりません。20世紀の革命は失敗に終わりました。しかも、多くの場合、災厄を招き寄せながら。そして、いま私たちは、どのように革命を起こしたらいいのかわからないのですから、進んで革命について語ろうとはしないのです。革命はもはや口にされない言葉になってしまいました。にもかかわらず、資本主義が破局をもたらすものであり、世界を変えることが緊急の課題になっており、革命が必要とされているということが、これまでになく明らかになってきているのです。私たちは、黙り込んだまま絶望にとらわれてしまったかのようです。

 この本の狙いは、その沈黙を破って、革命についての論議、革命が21世紀にもっている意味をめぐる論議の扉を開くことにあります。ラディカルな社会変革の可能性についてふたたび語ることができるようになるためには、20世紀において一般に受け入れられていた考え方を問い直すことが必要です。なかでも、革命の中心問題は国家権力を獲得することにあるという考えを問い直さなければなりません。この問い直しは、アカデミックな性格のものではありません。それは、世界中の反資本主義運動のなかで考え直されている問題なのです。国家権力という考え方をやめて、権力を取らずに世界を変えることが必要だといっているのは、叛逆の運動そのものなのです。しかし、それは道理に合わないことです。権力を取らずに世界を変えるなんて、どうやったらできるというのでしょうか。この本は、この明らかに不合理なことを追究した本です。それがどんなに不合理に思われても、私たちはこの問題を避けて通ることはできないのです。……中略……

 新しく序文を書くということは、出版に添えて何を願っているのかを考えることでもあります。日本語版に寄せる私の願いは、この本にともなって起きてきた論争の波が、幾重にもなって、日本の多くの海辺に押し寄せてほしい、ということです。(本文より)



NR関連書 資本主義を問い直す本



新版 相互扶助論
同時代社|ピョートル・クロポトキン/著、大杉栄/訳|3,000円|978-4-88683-643-4

さらば、強欲資本主義 会社も人もすべからく倫理的たるべし
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社会思想選書 迷走する資本主義 ポスト産業社会についての3つのレッスン
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世界金融恐慌 1929年世界恐慌が再来するのか?
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