2008.02.21.up


NR新会員社 現代人文社 『光市事件裁判を考える』刊行に寄せて

2008年1月新刊


光市事件裁判を考える
現代人文社編集部/編
A5判並製・168頁
定価1,700円+税
ISBN978-4-87798-358-1

現代人文社
(発売 大学図書)

 光市事件裁判は、「裁判員裁判の実施前の大試練」である

 最高裁によって差戻された光市事件裁判は、昨年12月4日の弁護側の最終弁論で結審し、判決は本年4月に予定されています。
 ご存知のように、この裁判では、上告審にいたって、新たに選任された弁護人が、一審・控訴審では争わなかった事実殺意や強姦目的などを否定を争うことになったため、テレビを中心とするマスメディアが被害者を全面に押し出して、猛烈に弁護士バッシングをはじめました。
 差戻控訴審にいたって、弁護士バッシングはさらにエスカレートしました。一般世論もマスメディアによるバッシングに同調し弁護人に対するバッシングは激しさを増し、脅迫状が届けられたり、脅迫電話がかかったり、大量の懲戒請求がなされる事態となりました。
 このように、光市事件裁判は、死刑の判断基準、差戻された広島高裁の審理のあり方など裁判そのものの問題ばかりでなく、裁判報道のあり方、刑事裁判とは何か、刑事弁護活動のあり方を問うものに発展しています。
 本書では、光市事件・裁判の争点を整理し、私たちはこの事件・裁判にどう向き合ったらよいか、どう考えたらよいかの視点を提供しようとするものです。
 はじめに、元裁判官である守屋克彦、刑事法研究者の川崎英明、供述心理学研究者の浜田寿美男各氏と差戻審弁護団に参加していただいた「座談会/光市事件裁判の論点を考える」で、これまでの裁判の経過と争点を洗い直します。
 ついで、佐木隆三(作家)、毛利甚八(ライター)、綿井健陽(ジャーナリスト)各氏から、それぞれの立場から事件を読み解いていただきます。
 さらに、「Q&A光市事件・裁判」で、石塚伸一(光市事件差戻審弁護団)氏が、これまで弁護団に寄せられた疑問点に丁寧に答えます。
 来年(2009年)5月から、国民が司法に参加する裁判員制度が実施されます。実施まで1年4カ月あまりと迫ってきました。今年の秋からは、選挙権人名簿に基づいて裁判員候補者名簿の確定がなされ、候補者選任の通知がみなさんに届くことでしょう。
 光市事件裁判から浮かび上がってきたさまざまな問題点は、わたくしたちに突きつけられた「裁判員裁判の実施前の大試練」と考えてもよいのではないでしょうか。たとえば、裁判報道は深刻な問題です。被害者だけに焦点をあてて報道するマスメディアの現状は、裁判がはじまる前に裁判員や裁判官が事件や被疑者・被告人に対する偏見を持つ危険を増大させます。
 いまこそ、冷静に光市事件裁判を考えることは必要ではないでしょうか。
 本書には、そうしたことを考えるヒントがたくさんあります。ご期待ください。

* * *

 小社は、このほど、NR出版会に入会しました。簡単に小社の紹介をさせていだだきます。
 1994年に創立し、今年で14年目に入ります。出版社としては、まだまだ新参ものといってよいでしょう。昨年8月、創立地の東京都新宿区信濃町から新宿区四谷2-10八ッ橋ビル7階に移転しました。
 もともと、弁護士実務家向けの刑事弁護実務の総合誌である『季刊・刑事弁護』創刊(1995年)のために創立しました。単行本企画は、刑事法・刑事司法関係からはじめまして、これらを中心に、出入国、難民など外国人の人権、被拘禁者の人権、国際人権、マスコミ、法教育へと発展しています。今後も人権を視座に、現代的テーマに挑戦していくつもりです。ご期待ください。ホームページのURLは、
http://www.genjin.jpです。

(現代人文社社長 成澤壽信)


NR関連書
光市事件をめぐって
裁判員制度・被害者参加制度・メディア問題


えん罪を生む裁判員制度
陪審裁判の復活に向けて
石松竹雄、土屋公献、伊佐千尋/編著
1,700円+税 ISBN978-4-87798-343-7
現代人文社(発売:大学図書)


裁判員制度は刑事裁判を変えるか 陪審制度を求める理由
伊佐千尋/著
1,700円+税 ISBN978-4-87798-281-2

現代人文社(発売:大学図書)


一極集中報道 過熱するマスコミを検証する
松本逸也/編著
2,000円+税 ISBN978-4-87798-294-2

現代人文社(発売:大学図書)

裁判員制度がやってくる  GENJINブックレット
新倉 修/編
800円+税 ISBN978-4-87798-149-5

現代人文社(発売:大学図書)


犯罪被害の体験をこえて  生きる意味の再発見
ハワード・ゼア/編著、西村邦雄/訳
2,200円+税 ISBN978-4-87798-303-1

現代人文社(発売:大学図書)


修復的司法とは何か  応報から関係修復へ
ハワード・ゼア/著
2,800円+税 ISBN978-4-7877-0307-1

新泉社


年報・死刑廃止2006 光市裁判
―なぜテレビは死刑を求めるのか―
年報・死刑廃止編集委員会/編
2,200円+税 ISBN978-4-7554-0169-5

インパクト出版会


年報・死刑廃止2007 あなたも死刑判決を書かされる
―21世紀の徴兵制・裁判員制度―
年報・死刑廃止編集委員会/編
2,300円+税 ISBN978-4-7554-0180-0

インパクト出版会


年報・死刑廃止98 犯罪被害者と死刑制度
年報・死刑廃止編集委員会/編
2,000円+税 ISBN978-4-7554-0079-7

インパクト出版会


市民講座・いまに問う メディアは私たちを守れるか?
松本サリン・志布志事件にみる冤罪と報道被害
木村 朗/編
1,500円+税 ISBN978-4-7736-3203-3

凱風社


メディア「凶乱」 報道加害と冤罪の構造を撃つ
浅野健一/著
2,200円+税 ISBN978-4-7845-1465-6

社会評論社


「報道加害」の現場を歩く
浅野健一/著
2,300円+税 ISBN978-4-7845-1434-2

社会評論社

なぜ死刑なのですか 元警察官死刑囚の言い分
澤地和夫/著
1,600円+税 ISBN978-4-8068-0544-1

柘植書房新社


まんが狭山事件
勝又 進/画
1,500円+税 ISBN978-4-8228-0626-2

七つ森書館


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