凱風社刊

[市民講座●いまに問う]シリーズ
米軍再編と前線基地・日本
ISBN978-4-7736-3106-7 C0031 定価1,400円+税
【編】木村 朗



【執筆者】石原昌家(沖縄国際大学教授)/高良鉄美(琉球大学教授) /田村順玄(岩国市議)/湯浅一郎(ピースリンク広島・呉・岩国) /舟越耿一(長崎大学教授)/荒川 譲(鹿児島大学名誉教授)/金子 豊貴男(相模原市議)/成澤宗男(週刊『金曜日』編集委員)/木村  朗(鹿児島大学教授)

              2007.07.02.up




















アメとムチで軍事基地化が進む日本

 
  「在日米軍再編特別措置法」(米軍再編特措法)が5月23日に成立した。札びらで住民の頬をひっぱたきながら米軍の都合を優先する国辱モノの卑劣な法律だ。自民党と公明党の賛成多数で成立した。
 沖縄、佐世保、鹿屋、岩国、呉、相模原、横田、横須賀は米軍の大基地を抱えているが、それぞれの問題点や苦しみが日本全体で共有されているとはいいがたい。新聞各紙「地方版」や「地方紙」ではそこそこ紹介されているが、全国版で「日本全体の問題」として報道されることは、残念ながら大事故・大事件以外まれだ。本書は、主要メディアが報道しない米軍再編問題に関する、地方から中央への異議申立てだ。
 ベクテルやロッキード・マーチンなど軍産複合体企業を背景に「効率よく」戦争をしようとする米国ネオコンはここ数年、「金づる」日本に多額の負担を求めてきた。「プレスリー命」の小泉前首相がブッシュ大統領に無条件の同意を与えて以来、日本は確実に米軍の前線基地と化しつつある。
 小泉純一郎を継承する安倍首相は、「美しい国」と「戦後レジームからの脱却」を連発する。しかしてその実体は「戦争のできるふつうの国」だ。そう考えると小沢民主党も、安倍晋三と五十歩百歩、同じ穴のむじなだ。どっちにしろ「戦前レジームへの回帰」が狙いだろう。
 東アジアから地中海までの「不安定の弧」への関与を強めようとする米国の国家利益は、日本とはなんの関係もない。この点は強調してあまりある。日本には当然、米国を支持する必然性も義務もない。北朝鮮の暴発を抑えつつ東アジア全体の安全保障の枠組みをつくりあげることを目指せばいいのだ。
 しかし問題は米軍にとどまらない。自衛隊は哨戒機P3Cを170機保有している。米軍でさえ200機程度だ。当初はソ連潜水艦を追跡する対潜哨戒機だったが、今は単に「哨戒機」と名称を変え、監視の視線を北から西に移している。また米国以外で世界ではじめてイージス艦を配備したのも日本だ。これ以上何を、米国は日本に要求するのか。すでに沖縄には極東最大の米空軍基地・嘉手納があり、米軍唯一の在外海兵隊・第三海兵遠征軍が駐屯している。
 米軍再編の実体を見てみる。まず、シアトルにある米陸軍第一軍団が横田へやってきて自衛隊中央即応集団と共同行動ができるようにする。自衛隊中央即応集団は「精鋭」をうたわれた習志野の第一空挺団が中核だ。厚木に飛んできて夜間訓練(NLP)で周辺住民を悩ませていた空母艦載機F/A18は岩国に移る。在沖第三海兵遠征軍のうち司令部関係者8000人はグアムに移駐する。金だけはかかるが、沖縄の負担は軽減されない。
 米国には沖縄に遠征軍や空軍を駐在させる軍事的理由と経済的利益があると見るのが当然だ。日本の負担はすでに大きい。そのうえ安倍政権はグアムの米軍施設建設になんと61億ドル(7000億円)もの大金を出すという。
 日本の米軍基地の75%がある沖縄では、米軍再編はかなり複雑だ。普天間基地の海兵隊航空部隊を辺野古に移そうとしているが、辺野古の沖合はジュゴンの藻場であり、また、生活の場に新設基地と飛行ルートが隣接している。久間防衛相は掃海母艦「ぶんご」を派遣して現地調査に介入する意向のようだ。一方、米空軍嘉手納基地のF15は本土の航空自衛隊基地で訓練を分散するというが、日米空軍「共同運用訓練」の疑念をぬぐえない。
 さらに来年、原子力空母ジョージワシントンが横須賀に配備されて実質母港とする。そのための港湾内の大規模浚渫工事が湾内で始まり、空母原子炉の維持管理に必要な電力を供給する米軍基地内火力発電所へのガス管増設工事も市内目抜き通りで始まる。
 日本はまだ米軍占領下にある。基地問題の全面解決こそ「戦後レジームからの脱却」ではないのか。(文責・新田 準)


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