『高木仁三郎著作集』であります。
 NR出版会に加盟させていただくにあたり、この言葉から始めることをおゆるしください。加盟出版社には先輩方も多く、私が若かったころは、胸をときめかせながら読んだ本を出版しておられました。書棚から本を手にすることが、明日への行動を予感させる時代でしたが、爾来、息の長い出版活動をつづけてこられました。書店さまにおかれても、このような出版活動の情報発信をつづけてこられたことに敬意を表します。


 さて、『高木仁三郎著作集』であります。
 20世紀最後の年に亡くなられた高木仁三郎さんは、脱原発運動の指導者のように語られることもありますが、その見識は広く、科学の世紀を走り抜けた思想家であり科学者でありました。人類の平和と地球環境を守る市民運動をつづけ、数々の賞を受賞しましたが、“ライト・ライブリフッド(正しい暮らし)賞”を受賞したことは特筆されます。同賞は“もう一つのノーベル賞”と言われ、欧米では評価の高い賞です。ノーベル賞の授賞式が行われる前日に、同じスウェーデン議会で議長によって授与されたといいますから、ノーベル賞が国王によって授与されるのとは対照的です。


 本著作集は一周忌の01年10月から刊行を開始しました。第10回配本を終え、4月の第12回配本をもって完結します。完結にいたるまで、実に多くの方のご援助をいただいてきました。編集委員の鎌田慧さん、佐高信さんをはじめ何人もの方々が新刊書籍の発行をもってご協力いただき、また読者の方々、書店・取次会社のみなさまのお力をいただいてまいりました。これから完売にむけて邁進してきたいと存じますので、完結セールにおきましては、一層のご助力をいただきたく存じます。


 小社は、昨年18点の新刊を発行しました。分野は脱原発、社会・思想、ルポルタージュ、食と健康などですが、年度版として『原子力市民年鑑』を発行し、『市民科学ブックス』の双書をつくってきました。今年は、イラク戦争、憲法、ルポルタージュなどの充実を図ります。


 私たちの願いは、まさに“ライト・ライブリフッド”――“よりよく生きる”ということです。この時代にあって、少し大げさな理念を掲げることは大切ではないでしょうか。宮澤賢治の詩編から社名をいただいた私たちが“市民出版”を標榜する意味もその点にあります。
 新参者ですが、どうぞよろしくお願いいたします。


(七つ森書館代表 中里英章)

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